高杉晋作とピストル

文久2年(1862)5月、高杉晋作は千歳丸に乗って上海に渡りました。

海外の見聞を広める(偵察する)為にオランダ領事館を皮切りに、フランス・イギリス・アメリカ・プロシア・ロシアの領事館を訪ね、現地の宣教師らから清国が植民地化に至った過程を聴取しました。

 

そして同年6月8日、高杉晋作はオランダ商人からピストルを購入しました。

その10日後の18日には、アメリカ商人からも一挺購入します。

その内の一挺が下の写真のスミス&ウェッソン№2です。

 

 

この貫通シリンダーと金属カートリッジを使った最新鋭のリボルバー(回転式拳銃、スミス&ウェッソン№2が高杉晋作から坂本龍馬に手渡され、寺田屋で襲われた際、その中に込められた5発の銃弾(銃自体は6発装塡可能)が龍馬の命を救います。

 

このスミス&ウェッソン№2はホーレス・スミスとダニエル・ベアード・ウェッソンが設立した会社・スミス&ウェッソンのリボルバーです。

1857年に発売されていた第1号モデル・スミス&ウェッソン№1が、1861年に始まったアメリカの南北戦争でバカ売れしたのを受けて、そのポップアップ型として1861年6月に販売された物なので、高杉晋作は最新の拳銃を購入したわけですね。

 

龍馬は、その寺田屋の騒動で、このスミス&ウェッソン№2をなくしてしまい、後に前機種のスミス&ウェッソン№1を購入しています。(これは5発しか装塡できなかったので、歴史家の中には寺田屋で使われたのは№1だったんじゃないかという説を唱えている方もいるようです。)

 

高杉晋作がこの拳銃を坂本龍馬に手渡す時に、どのようなやり取りをされたのかは想像することしかできませんが、この最新式の拳銃を、子供のように眼をキラキラさせながら眺めていたんだろうなぁと思うと、二人とも「やっぱり男の子だったんだなぁ」という思いが深くなります。

 

そんな無邪気な坂本龍馬の男の子のような側面も、嶺里ボーの小説『龍馬はん』の魅力のひとつです。

 

“「高杉はんゆうたら、前にお話しされてた?」

「ほうじゃ、長州の高杉晋作じゃ。
あん人がおらんじゃったら、ワシはとうに、あの世に行っちゅう。
あん時、高杉さんがくれたピストールのお陰で、なんとかこうして生きちゅうぜよ。
高杉さん。
げに面白き、お人じゃったちや。
…”

抜粋:: 嶺里ボー “龍馬はん”

 

嶺里ボーのKindle小説「龍馬はん」

嶺里 ボー『 龍馬はん』 

 

 

慶応3年11月15日(1867年12月10日)、近江屋で坂本龍馬と中岡慎太郎が暗殺された当日、真っ先に斬り殺された元力士・藤吉。

その藤吉の眼を通して映し出された、天衣無縫で威風堂々とした坂本龍馬を中心に、新撰組副隊長・土方歳三の苦悩と抵抗、「龍馬を斬った男」と言われる佐々木只三郎、今井治郎の武士としての気概など、幕末の志士達の巡り合わせが織り成す、生命力溢れる物語……。→ 続きを読む

 

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